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【雑感】TEtoKI(小売店舗)の経営を通じて感じたこと

 2019年に会社を設立して間もなく、関係者の方からお声がけいただき2020年8月から経営することになった小売店舗(TEtoKI)を2022年7月末をもって閉じました(オープンした時の報告記事はコチラ)。始めるときからテナントとしては2年間で終わる!と思っていたので、その通りに終わらせてしまったのですが、まさにコロナ禍の真っただ中の2年間という短い間で、単に販売のお店をするというより、地域の方が気軽に立ち寄ってくれたり、ここに来れば店主や誰かに会えるかもしれない。と思ってもらえるような、そんな場所にしていければと考えてお店をしていました。貴重な機会を頂き、様々な経験を積むことができたので、実店舗を閉じて2年経ってしまいましたが、改めて少しだけ整理しておければと思いました。

TEtoKIロゴのサイン

1.商品を仕入れて販売する

 まずはそもそも、「モノを売る」という経験をしたことがなかったにもかかわらず、小売店をベースにしようと思ったのは、店主の顔が見える小さなお店がこのまちにもっと増えたらよいなという想いがありました。小浜市内や近隣市町に素敵なカフェは結構ある気がしていて、魅力的なお店も多いものの、まちにはもっと直接モノを見て買えるお店、店主とのコミュニケーションを楽しめるお店がたくさんあると良いと思っています。ありすぎて困ることはないし、ありすぎるくらいでこそ、そのまちに暮らして楽しいと思える場面が増えると思うんです。

 ということで、何のお店をしようかというところで思ったのが、小浜市は早くから「食のまちづくり条例」を定めていたり、食文化や郷土食が豊富な「食のまち」ということ。小さな店からも「食のまち」小浜の魅力をより広げたり、深めたりしていけないかと思い、食に関わるお店にしようと考えました。ちょうど我が子も保育園に通っている時期だったので、子どもにも安心して食べてもらえるもの、親が安心して子供に食べさせてあげれるようなものを扱おうと、オーガニックやグルテンフリーの食品・調味料やお菓子をメインに販売することになりました。

 地元農家さんのクローバー農園さんや、やさいのはらねさんの野菜や果物も置くことができました。大きい会社からの仕入れもしましたが、例えば、若狭町の米農家、米農房そまねこさんの古代米や自然栽培・有機栽培のお米や、池田町のコメコロさんの美味しいクッキーやケーキなど、市外のつくり手さんの商品を置けたのもお店をやっていたからこそのつながりを感じ、場所の持つ力を教えてもらえました。

 そして、食の愉しみは食品だけではないと思い、小浜市の代表的な産業の一つでもある若狭塗り箸を扱う株式会社 マツ勘さんにお願いして、お箸も取り扱うことにしました。その他、地元木工作家さんの栗本さんにお願いし、木皿や照明シェードも置かせてもらいました。そして、初年度は資金面であまり置けなかったものの、2年目からは書籍の取扱数も増やすことができたのは嬉しく、一口に「食」と言っても様々な観点で食につながる本があることが改めて分かったのと、本を通じてお客様方とコミュニケーションをとれたのもとても良い機会だったと思っています。

 その他にも、チャレンジ出店棚を設けたり、回数は多くは設けることはできませんでしたがポップアップ出店をしてもらったり。たくさんの商品を扱うことができ、お店を始めたときには思ってもいなかった、多くのつくり手さんとの貴重な出会いがお店をしている何よりの価値だったなと思います。ありがたいことに、お客様が来なかった日はなく、ざっくりと、2年間で1万組のお客様にお買い物いただきました。色々な方に支えられてお店ができていたなぁと、改めて感謝しかないです。

クローバー農園さんのお野菜
マツ勘さんのお箸
栗本さんの木皿やコースター
ベジグーさんのケール
人気商品だった「あゆピー」

2.シェアキッチンを運営する

 さて、お店を始めるときに店舗スペースだけでなく、キッチンスペースがあり、ここも併せて活用することになりました。食品衛生責任者の講習を受け、諸々許可を取りましたが、お店が入るのが小浜市まちの駅という公共的な施設ということもあり、自分たちでやるのではなく、「食のセレクトショップ」のシェアキッチンとして色々な人に使ってもらおうと考えました。運営方法を考えるときに、週単位・月単位で貸す方法や曜日貸しなども面白そうだなと思いましたが、コロナ禍ということや駐車場問題、独立した空間ではないということなどを鑑みて、固定の貸し出しはせずに緩く運営することになりました。

 ということで、使いたい人と都度相談・調整するスタイルとなったんですが、まぁこれはこれでよかったのかなと(また別の機会があれば週単位や曜日貸しなどのシェアキッチンも運用してみたいなとは思いますが)。ここでも地域のつながりで出店希望の縁を頂いたり、自分たちの企画で試食会の場を設けたり、たくさんの方に楽しんでもらえたカレーのお祭り(2年目の『カレーとスパイスのお祭り』報告記事もぜひご覧ください!)を企画することもできました。カレーのお祭りは1年目の挑戦が好評を頂き、2年目のカレーのお祭りでは出店者数もお客様も増え、いつも以上に賑やかな1か月間を過ごすことができました(基本、週末出店で期間中に延べ約500食のカレーが提供されました)。たくさんの出店者の方々と多くのお客さんと美味しいご飯を共有できる、「食べる」ということを共有したり、一緒に楽しめる機会・場があるって幸せなことだなぁと!

Cafe Seasonsさん出店
試食会
Y’sキッチンさん出店
カレーのお祭り
カレーとスパイスのお祭り

3.食にふれる場・機会を企画する

 日常的な商品販売やお客さんとのコミュニケーションと、定期的なシェアキッチン出店、に加えて不定期というか季節行事的・イベント的に「食に触れる場や機会」があったらよいなと思い、たくさんの方に企画・運営を助けていただきました。地域の食文化や郷土食も暦をベースにしていたり、季節ごとに営まれてきたことが多く、お店でもそういったことを体験・体感したり、学べる機会があったらよいなと思ったんです。

 カレーのお祭りでもお世話になった島光さんには、味噌づくりワークショップやガラムマサラワークショップなど、発芽玄米餅が絶品な田庭ひびき家の保志さんには餅つきを、バレンタイン時期にはCafe Seasonsさんにローチョコレートレッスンを開いてもらったり、クローバー農園の小山さんとはプランター野菜ワークショップやワークショップ参加者との収穫祭を開催することができました。飲食店さんのコラボ出店でのお弁当販売や単発イベントになってしまいましたがケールフェアも開催できました。色々な方が関わってくれることで、様々なことが楽しめるお店作りもできていたのかなと思います。

 そして、「食」に限らず広く地域の魅力や情報を発信する場所としてもお店を活かしていければと考えていたので、市内デザイン会社のMATTさんにお声がけしてMATT展をしてみたり、鯖街道のイベントに合わせた作家展を開催したり、まだまだ企画したいこともあったので、どこかで機会があれば嬉しいなと企画を温めておきたいなと思っています。そんなこんなで、シェアキッチン出店企画やイベント企画など、2年間で54件の機会を設けることができたのも貴重な経験となりました。

ガラムマサラレッスン
味噌づくりワークショップ
味噌づくりワークショップ
TEtoKI餅つき大会
餅つき
ローチョコレートレッスン
プランター野菜作りワークショップ
収穫祭

4.お店の想い・動きを発信する

 いろいろと初めての経験ばかりでしたが、お店のことを知ってもらうのも大切で、小さい町の小さいお店ができることは限られてるかもだけど、情報の発信もお客さんとのコミュニケーションの一つと考え、主にインスタグラムで発信していました。日常的にお客さんに届けたい、お客さんに知ってもらえると来てくれるキッカケになるだろうなと思う情報を投稿することを心がけ、2年間で343件の投稿(ストーリーズ含まず)をしました。少しずつ増えてくれた1,200ちょっとのフォロワーの方々は小浜市内を中心に嶺南にお住まいの方が多く、投稿を見て、ほしい商品があったらからとか、面白そうなイベントだったからと、インスタを見て反応してくれる方もけっこう多かったのは、お店をやっていて嬉しいことの一つだったなぁ。

 ありがたいことにメディア等で紹介していただく機会を頂いたり、弊社代表の活動の一環としてTEtoKIのことを紹介する機会を頂けたりと、お店のことを知ってもらうチャンスがあったのはたくさんの方々の協力や支援・応援があったからこそでした。

 お店ひとつ、場所ひとつを運営していくのにも様々なことをしていく必要があるし、色々なことができる可能性がある、チャンスがあるということを教えてもらったTEtoKI経営の機会でした。お店自体はありがたいことに初月から(人件費抜きで)黒字で、利益分で商品数を増やし続けた2年間(最終的には商品数はオープン時から2倍以上になっちゃいました。。)だったので、そこから先にどう人件費確保・拡大していくかの挑戦はできませんでしたが、企画マインドや運営マインドは少しは成長したのかなと思います。

 改めて、魅力的な個店の存在が街に及ぼす影響や波及効果はとても大きいものがあるなと思っているので、自分たちでやるのか、誰かのお手伝いができるのか分かりませんが、弊社としてお役に立てることがあればぜひぜひ、力になりたいですし、面白いお店づくり・場づくり・まちづくりに貢献していければと思います。