プレイスの要素
単なる空間としての「スペース」ではなく、「居場所、居心地の良い場所」である「プレイス」とするためには、イギリスの都市プランナーであるジョン・モンゴメリーが示す、3つの要素で対象となる空間を捉える必要がある。その要素とは、
- 形態(Form):空間的な環境としての物理的要素
- 活動(Activity):表出している環境としての機能的要素
- 印象(Image):表象的な評価である心理的要素
の3点である。モンゴメリー氏も上記3要素を説明する際に、重要な考え方として地理学や人文学などの分野で語られていた「人々と場所との関係性」を捉えるセンス・オブ・プレイス(Sense of Place)という概念(その空間の物理的な特徴だけでなく、その場所が生まれた背景やその場所での活動、歴史や文脈の積み重ねで生み出されているという、その場所独特の性質)を示しているが、詳細は別の機会に回したいと思う。
この3つの要素を関係性も踏まえて示すと、以下のように表すことができる。
これまでは、空間の「形態」をつくることに多くの関心が寄せられていたが、その空間を居場所にするためには「活動」を生み出すことが必要であり、「形態」と「活動」の瞬間を切り取るだけでなく、連続した時間の中でこれらを捉え、その空間を生かしていく人たちの「印象」を高めていかなくてはならない。
多くの建築家やプランナーは計画・設計するときには形態のことだけなく活動のことも考えて(期待して)いるが、その想いが完璧(あるいはそれ以上に)実現している例はあまり多くないように思う。空間の持つ力は確かにあると信じているが、それを生かしていくための手段が今まで少なすぎたのだとしたら、そこをどうにかするヒントがこの「プレイス」という捉え方にある。「活動」を生み出すためにはマネジメントなどが必要だし、「印象」を高めるためにはマーケティングなどが必要だと思っているし(そこらへんもまた別の機会に書ければ)、形態も含めてそれぞれのデザイン、トータルで考えたプロセスデザインも重要になる。
一度つくられたハードな形態はなかなか変えにくいが、多様な活動を日常的に生み出し、わかりやすく(とっつきやすく)寛容な印象を育んでいくことがまずは大切になる。とはいえ、いきなり日常的な活動を生み出すのは難しい。まずは、その芽を探り、日常的な活動シーン(生活のシーン)を描いたうえで単発のイベントや定期的なイベントを仕掛けていく(考えていく)ことと、多くの人に思い浮かべてもらえる印象づくりなどでお手伝いできることがあれば幸いです。