and PLACE(アンドプレイス)代表の髙野哲矢です。以前の投稿で2つの視点からプレイスの意味をお伝えしました。今回は都市デザインにおけるプレイスとは何かをもう少しだけ詳しくお伝えしようかと思います。(今回はいつもより少し長いので2ページに分けて掲載しています。)
以前の投稿でも、「プレイス」とは「人々の居場所、居心地の良い場所」であると書いた。
まちに住む人が身近に、大好きであったり、愛着があったり、誇りに思っていたりするような場所があればあるほど、その町での暮らしは豊かになる。今般の状況を鑑みても(もちろん、緊急の状況で死活問題である方も多いですが)、生活圏の身近な場所や店舗とのつながり(場所・店舗自体の認知や愛着、そこに関わる人との関係)がいかに重要かということを感じている。
人々の関係を育む場所
前回の投稿でも少し触れたがソーシャルディスタンスなど対人距離の考え方がこれまでとは変わろうとしているからこそ、暮らしの中での他人との触れ合いや関わり合い、支え合いなどの重要性はますます高まるのではないか。アメリカの都市社会学者レイ・オルデンバーグによる『サード・プレイス(原題:The Great Good Place)』では、第一の家、第二の職場・学校、それに続く第三の場所(インフォーマルな公共の集いの場であり、とびきり居心地よい場所)の重要性を説いている。
同書では、サードプレイスの実例として、郵便局や薬局(これらは地域の人々が頻繁に訪れ生活に欠かせない施設だった時代のことと注記されている)、アメリカのある小さな町のメインストリート、イギリスのパブ、フランスのカフェ、アメリカの居酒屋、古典的なコーヒーハウスを挙げている。屋外空間や公共空間だけでなく、地元の飲食店や個人商店ならではの特質も述べられ、以下のように語られている。
“ あらゆる人を受け入れて地元密着であるかぎりにおいて、最もコミュニティのためになり、世界の優れた文化はみな、活き活きとしたインフォーマルな公共生活をいとなみ、必然的に、その舞台となる庶民の憩いの場を独自に発展させてきた。”
『サード・プレイス(原題:The Great Good Place)』(レイ・オルデンバーグ)
アクティビティから考える
まちの核になるのは人である。人々の暮らしを豊かにするためにまちは在り、まちなかの空間・施設はそこでくつろいだり、出会って会話したり、売り買いしたり、楽しい時間を過ごすための場所であり、場所への欲求(その場所での活動の型)は居住者であろうが来訪者であろうが根源的には変わらない(当然、特定の人を呼び込むための戦略・戦術や施策等はあるが)。公共空間デザインの第一人者であるヤン・ゲール氏が屋外活動の型を①必要活動、②任意活動、③社会活動に整理している。(参照:『建物のあいだのアクティビティ』(北原理雄訳、2011)(原著は『Life Between Buildings: Using Public Space』2006)
- 必要活動は、すべての条件下で起こる活動であり、目的に向かって歩いたり、買い物をしたり、ただただ待ち合わせをしていたりと、必要に迫られて行ってる行動を指す。この手の活動は周辺の環境の影響をあまり受けずに行われる。
- 任意活動は、外部条件が良い時に起こる活動であり、散歩や日光浴をしたり、レクリエーション活動など、そうしたい気持ちがあり、時間と場所が許すときに参加する行動を指す。娯楽の面も持ち、生活に楽しみを与えてくれる活動で、周辺の物的環境に大きく左右される。屋外空間の質が貧しいときには必要活動しか起きないが、物的な環境が良くなることで幅広い任意活動が発生する可能性が増していく。
- 社会活動は、公共空間に他の人々が存在することを前提とした活動であり、子どもたちが遊んでいたり、挨拶や会話が生まれていたり、他の人をただ眺め、耳を傾けるという受け身の活動も含まれる。この活動は人々が動き回り、同じ場所にいることの直接の結果として、自然に生まれてくるし、その性格はそれが起こる場面によって変わる。
これら任意活動や社会活動をより多く生み出すことが重要であるとゲールは指摘しており、その舞台(受け皿)となるのが公共空間などのPLACEである。
(次ページ:プレイスの要素)