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「まちなかの居場所」を探る

and PLACE(アンドプレイス)代表の高野です。非常事態宣言も発効され刻々と社会の価値観が変わる中、都市プランナーとして地域のために何ができるのか模索しながらも動いていければと思っています。そんな中ではありますが「まちの様相」をどのように捉えていくかを模索して5年前くらいから取り組んでいる「まちなかの居場所」研究体について書きたいと思います。

公共空間の利活用における転換点

 もう5年も前の話になるが、2015年は個人的に大きな転換点となる年だった。「公共空間の質研究部会」が立ち上がり、公共空間の質(クオリティ)やその捉え方についての模索が始まったばかりで、全国まちなか広場研究会の山下さんとも出会い、「まちなか広場賞」が動き出していたし、国土交通省主催で国内の専門家が登壇するプレイスメイキングフォーラム(連続座談会)やデンマークからヤンゲール氏を招へいしてシンポジウムが開かれた。当時、担当してた関連調査(『都市空間の魅力増進の推進体制に係る基礎的調査』)も取りまとめながら、多くのことを学ばせてもらった。その後も国交省では継続して関連した調査は蓄積されているようだし、全国各地で公共空間の利活用や官民連携の動きはますます加速している。

まちを「動詞」で捉えてみる

 「まちなかの居場所」を考え始めるときに大きく影響を受けたのが、筑波大学の渡先生からご教授頂いた「プレイスメイキングと7つの場」と、LIFULL HOME’S総研所長・島原万丈さんが発表した『Sensuous City[官能都市]-身体で経験する都市:センシュアス・シティ・ランキング』

 渡先生は三浦展さんと『吉祥寺スタイル』という本も出していて(知っている人も多いと思うが、これもすごく面白い本!)、「座り場」や「食場」など7つの視点での小さな場の捉え方をお聞きしたときは目から鱗だった。これを自分なりに「○○場」をまちなかで探しながら「まちの様相」を捉える訓練をしていこうと。

 『Sensuous City』の中で、「都市に対するリアルなまなざしを可視化する」、「動詞で都市を評価する」とし、「ある都市空間の性質や良し悪し、もしくは計画意図の達成度は、建築・土木的な要素に還元して測定・評価・理解するよりも、いっそ、そこで行われているアクティビティで測定するほうが正確で、本来の目的からいっても妥当ではないか」と正に述べられている。都市を計画する立場、それを支える・一緒になって考えていく立場(でもありたい)として、少しでも多くのボキャブラリーを持っていなくてはならないと思った。この2つの出会いから、「まちなかの居場所」研究体として、まちで見つけた「○○場」を撮りため始めた(2017.12.7以降更新できておりませんが…)。

当面はソーシャルディスタンスも大切だが、まちでの生活を豊かに過ごすために、どれだけ多様な場(となる仕掛け)を用意できるか、他の人との距離感に対する余地(選択性)を残しておけるかが、これから先ますます重要になってくる。研究体活動の中では、これまでに45の「○○場」を見つけている(この経験・考え方が横浜市の景観ビジョン改定のお手伝いをした時にも役に立ったのだが、それはまた別の機会に書きたい)。例えば、渡先生も挙げていた「座り場」や「眺め場」に「食場」、「遊び場」や「語り場」などを多く発見できている。その他にも「待ち場」や「溜まり場」、「佇み場」、「魅せ場」など、こうやって「動詞(人の動きや活動、行動さらには状態なども)」でまちを眺めてみると色々な気づきがあるし、まだまだ考えられる場や遭遇していない場があるはずだ。見つけた「○○場」についてはまた改めて紹介・解説していきたい。

 今は耐える時期ではあるが、拠点にしている小浜でも、若狭地域でも、福井県でも、全国各地でも「まちなかの居場所」を探し続けたい(見出したいし、生み出したい)し、少しずつ他の人とも一緒に探してみたいとも思う。まずはのんびりと探して見つけて、まちの魅力(のヒント)に気が付くことが大切。まちを楽しむヒントはまちなかに溢れている。